top of page
_HSC0358.jpg

「呼吸を止めて100秒あなた真剣な目をしたから」

  • 4 日前
  • 読了時間: 14分

更新日:3 日前

どうも!Voの折笠です。

春ですね!若干寒いですが花ほころび良い感じです。

唐突ですが皆さん、呼吸していますか?酸素取り込めてますか?

大丈夫ですか?ちゃんと生存の実感を自分で掌握してますかね?

何かと負荷が心身にかかるこの年度末、皆さんが日々の疲れから虚な状態になっていないか少し心配になりましたので、今日はちょっとそれを確かめる実験をしてみましょう。


方法は簡単です。

まず、ちょっと100秒間息を止めてみてください。


※決して無理のない範囲でお願いします!キツかったら途中で止めてください。


下の再生ボタンを押すと約100秒で音源が終了しますので、よければ目安にお使いください。↓



はい。どうでしたか?苦しかったでしょう。

30秒過ぎたくらいで段々と眉間のあたりに嫌〜な刺激が走り始め、顔が紅潮し全細胞が焦り始めるのを感じますよね。さらにそこから10秒過ぎたあたりから胸の奥が焼けつくような感覚が襲い、その後は数を数えるどころではなくなり、人間の生存本能が普段使わないスイッチを勝手に入れて呼吸を強制的に行い、酸素を大きく肺に取り入れたことと思います。その瞬間、「ああ、生きてる。」とあなたはしっかりと実感したのではないでしょうか。

もし、あなたが今疲れからちょっと正気ではない領域に傾きそうなほど虚な状態、あるいは不安やネガテイブな感情に苛まれているならば、是非この原始的な試みを自分なりに実行し、生存を実感し心身のバランスを取ってみると良いと思います。


何故こんな投げ掛けを急に皆様にさせて頂いたかと言いますと、新年度を迎えるにあたり不屈の卑屈も心機一転、さまざまな新しいコンテンツを皆様に届けるべく感受性を研磨してゆかねばならないと改めて痛感したからです。

それには大きな刺激ばかり感受するのではなく、日常の瑣末な出来事や気になる小さなトピックも適当に受け流さず、掘り下げてさらに膨らます姿勢が必要だと改めて実感した今日この頃です。実践あるのみということで、今回もひとつ常日頃から気になっていたあるトピックを掘り下げたいと思います。


皆さんよくライブに行きますよね?音楽の。特にメインボーカルがいるバンドのライブなどを観に行くと、私は常々感じていたことなのですが、会場の規模に関係なく(小さな箱やアリーナクラスでも)、またプロアマ問わず

メインボーカルがマイクを通して歌っている時、本人の歌声とは別に聞こえる「誰かの同じ種類の歌声」を感じませんか?

歌の音域、歌唱法に関係なく、全く違う人物が歌っていても、本人の地声に被さるようにその「誰かの同じ種類の歌声」を僕は感じるのです。

言い換えれば誰が歌っていてもマイクを通すと特定の同じような音の声に聞こえる場面がある、とも言えます。これは自分だけなのかと思って調べたら一定数同じようなことを感じている方がいるようで、その原因についての意見がいくつかネット上に散見できました。その主な内容はライブなどでボーカルマイクとして使われるマイクにはコンプレッサーという音響効果をPAさんがかけてくれていて、他の楽器や音源の音とのバランスを取りやすくしていること、また大音量の演奏の中で歌声の通りをよくするために、マイク自体が人間の声の中音域を強調する構造になっている、など主にこの2つの理由でマイクを通すと皆同じような声に聞こえることがある、と書いてありました。自分は音響の専門家ではないので、この説が正しいのか判断出来ないのですが、とりあえず自分自身としてはあまり納得はしていません。なぜなら私は確かに、様々なライブの歌声の中にボーカル本人の地声とは違う「共通の何者かの歌声」を感じ取っているからです。

今回はそのことについて科学的な「検証」ではなく、私自身が考えた「見解」を短編小説の形で皆様にお伝えすることにしました。それがこちらです。↓

____________


―夜空は冷気に満ちていた。それでも地表が近づき人間たちの生活圏が見え始めると、私は暖気を観測すると共に生物が発する独特のイオン臭気を感じ取っていた。

大気圏から地上に到着するまでに作成した擬似感覚で大気の密度と温度を観測し、自分の精神座標をこの星の空間に同期させるまで地球時間で6分程かかった。地球の表現だと太陽系から3万光年以上離れた惑星で自然発生した私達の種は、度重なる進化の末に肉体という概念を捨て、質量や運動能力の制限を受けない精神体のみでこの宇宙に存在するようになった。

今回私が地球にやってきた目的は、物質としての肉体を持ちながら、ある程度の知的レベルを保ち生命活動を存続している種、つまり「人間」を調査することで、原始的な「生命」の精神構築プロセスを我々の意識に再現し、インストールすることだった。

到着した当初はそれほど困難な任務ではない予定だったが、地球の生物の神経系ネットワークによって構築された情報網が想定より複雑だったため、自分自身が同期することのできるデバイスが中々見つからず、かつ環境磁場と情報の干渉力が想定より強くこのまま精神のみの状態で地球に留まると自分の情報が短時間で書き換えられてしまう恐れがあるため、私は自分が入る「器」を早急に見つけ出さねばならなかった。

少し焦燥していた私が最終的にやっと見つけた器は、地球の位置観念で言う「国」という枠組みの中で、「日本」と呼ばれる場所に住む一人の少年だった。名を赤木テツオと言い、336時間前に16歳に成長したばかりだったが、私が彼を発見した時、彼は自宅の個室で自らが作った簡易的な装置で生命活動を終了させていた。心肺機能と思考機能は完全停止していたが、まだ停止から数秒しか経っていなかったため、私は彼の肉体に入り込む作業を想定より容易に行うことが出来た。物質的デバイスへの同期は到着まで数千回シミュレーションしたため、さほど違和感なく感覚を同調することが出来たので、後はしばらくこの「身体」というデバイスを通して周囲の人間を観察し、調査すれば良い。

私はまずこの赤木テツオが生命活動を自ら終えた時、すなわちこの星の概念で言うところの「死」を体現することになった理由を探るところから調査を始めることにした。

彼が横たわっていた場所の近くに、彼の筆致と思われる文字の記された記録媒体があった。記されていた言語はすぐに理解できたので私はそれを「解読」してみることにした。

薄い植物の繊維を固めて出来たその「ノート」という原始的な記録媒体には、彼のいくつかの手記が残されており、発見時に開かれていた面には


「息ができないことが苦しい。ごめんなさい。」


とだけ記されていた。健康状態の観測と今の身体感覚から察するに、特に呼吸器や心肺機能の疾病や欠陥は無いようなので、肉体的苦痛を理由に生命活動を自ら絶ったとは考えにくい。環境情報から考察しても他者からの危害によるものでは無いし、この内容の手記を残すことになったならば、なぜまずその要因の排除を試みず、自らの手でさらに呼吸を困難にするという行為を行ったのか。人間の中には一定数、自らの意思でそういった自滅行動を取る者がいることを精神シミュレーションで想定してはいたが、彼の陥ったこの状況については未だに私は理解できないままでいる。


私は手がかりを求めて赤木テツオの手記を遡ってさらに解読してみた。

その一節に「死ぬまでにやってみたいことリスト」という項目があった。

先にも述べたように彼の生前の健康状態は良好だったと予想できるし、強いて言うならコルチゾールが世代平均より少し多い以外にはそ特に疾病の要因や身体的欠陥は見受けられない。おそらく平均的な寿命を生きられたと思うのに、「死」を予見していたような文章が残されていたこと、これもまだ私には理解できていない。

そのリストの内容は10項目から構成されており、読み進めるうちに私の言語理解能力が乗数効果で飛躍的に向上したため、私はその殆どを理解することが出来た。

その一部を抜粋してみる。


「図書館にひとりで行って、自分の好きな本を借りる。」


「自分の好きな時間に起きて、自分の好きな時間に寝る。」


「映画館で1日に一人で映画を2本続けて見る。」


10項目のうち殆どが上記のような人間社会の生活の中で容易に再現できる内容だった。彼がこの項目を実現できていたか定かではないが、ノートの記録位置からの推察と「やってみたい」という希望表現を用いていることから、未来に向けた具体的な未完遂の願望の意味で記した可能性は高い。

私は調査のため、彼の代わりにそれをこの身体で実行してみることにした。テツオの家族が彼の死に気づく前に私が同期したため、擬似的にだが「家族」という生活体系に潜入することも可能になった。

彼の思考情報やプロセス体系がまだわずかに消失せず肉体に残っていたので、私は赤木テツオの行動現象を完璧に近い形で再現することが出来た。そのため両親が自分の息子の行動を不審に思ったり、変化に気づくことは一切無かった。(仮に何かの変化を感じても、人間の強固な自己バイアス機能と熱力学的な観点から私の正体に気づくことは、地球人には到底不可能なのだが。)

10個のリストのうち8個までは、24時間以内に彼の生活圏内で容易に再現することが出来た。それが彼の精神にどんな多幸感、あるいはカタルシスを生んだのか断定はできないが、私にはあまり予想できない目的意識を彼は持っていたようだ。

そして、残りの2つの項目はまだ未完了なのだが、それはまだ1日で完遂するには少し肉体的負荷が多いことに加えて、単純に時間的な制約があったので少し調査の時間を設けてから実行することにした。


赤城テツオが残した願望のうちの一つは、


「ライブハウスに行く」だった。


ライブハウス、という場所が何を意味するのかすぐには判明しなかったが、Live(生きる)とHouse(家)という、人間が高揚と安堵を感じる言語で構成されている名詞という構造から察するに何かしらの娯楽施設であることは予想できた。


翌日赤木家の近郊にある地下構造を利用したライブハウスへ潜入してみることにした。夜間の外出の際にテツオの両親が極端に否定的な態度を私に向けてきたが、今日はライブハウス調査が目的のため一時的に催眠をかけて眠ってもらったので問題はない。肉体のデバイスさえ確保できていれば、共有意識の情報網にアクセスして私ならこの星の中で必要な大体のことは実現できる。ただし肉体にもかなりの負荷がかかるのと、使い過ぎるとこの星の自然要因の発生過程に影響が出てしまい正確な調査に支障が出るので多用はできない。

ライブハウスと呼ばれるその場所はどうやら「音楽」と呼ばれる人間を主体とした音響現象の再現行為を自発的に行い、それを観覧することを目的とした施設のことらしい。

木材と石材で構築された室内へ入ると、そこにいた男性に私はいくらかの紙幣通貨を手渡し、テツオのノートと同じ素材で作られた薄い識別票と思われる物が私に手渡された。私は地下へと続く薄暗い階段を降りていった。


何か呪術めいた模様が壁に施された階段を降りると、かなり重厚な仕切り構造が現れた。それを開けた瞬間、私の体表に衝撃と言っていいほどの音響がぶつかってきた。

歪んだ擦過音、破裂音、拡張した人間の声、振動音、そして歓声。一瞬聴覚の感度調整をしようと考えたが、感覚を変えてしまっては正確な調査にならないため、私は少しでも音の干渉を受けにくい座標を割り出してそこに立ち留まった。

生命の危機を連想させるほどの轟音だったが、環境負荷に慣れるうちに音響の発生源である4名の人間の動作や、彼らが生み出す音の循環が彼らの感情の表現行為であることを理解した。それを観て高揚する数人の人間たちに目を向けると、呼気の内容から少しアルコールを摂取しているようだが、その高揚は明らかに目の前の音響と視覚的な刺激がもたらしたものだと理解できた。理解が進むにつれ、私自身も少し肉体的な刺激を受けて高揚を実感していた。いくつかの整数を基軸に構成された再現性のある一定の躍動感、この星で「リズム」と呼ばれるその概念が、明らかにテツオの身体を、そして精神体である私を高揚させていた。周りの人間も呼吸数が多くなっているが、それでいて明らかにリラックス状態を維持しているのが瞳孔や皮膚の質感から見て取れる。この状態を人間の詩的観念を用いて表現するなら、「呼吸がしやすい」状態と言えるだろう。酸素濃度は地上より明らかに少ないが、ここで音楽に触れている人間達は皆、普段の生活環境よりも呼吸がしやすい状態になっているのだ。

テツオは「息ができないことが苦しい」と書き残し、自らの手で生命を絶った。

それならば生前テツオがライブハウスへ行くことを生活の目的に設定したのも理解できる。

これがテツオがかつて求めていた刺激なのだろう。私はこの体験から導き出した仮説を基軸にして調査を進めることにした。


それから半年ほど私は赤木テツオとして過ごし、168時間内(人間の生活周期で約1週間)に最低2回は夜になるとライブハウスへ通った。そこで出会った人間はみなコミュニケーション能力に長けており、様々な音楽を接点として、ライブハウスへそれぞれ「呼吸」をしに来ていた。そこで出会う人間による何種類もの音楽を基軸とした表現形態、それは「バンド」と呼ばれており、私はその表現の一端に触れることにより、人間の精神構築プロセスや情緒の生成方法をサンプルとして収集することが出来た。その過程で、赤木テツオが何に苦悩し、どのような外的圧力が彼の思考を視野狭窄状態に陥らせ、自ら生命を断つという選択をに至ったのかをを理解した。彼の苦しみの詳細を彼自身の力で社会へ伝えることはもう不可能だが、彼がもし生命活動を持続させていたなら、どのような方法でそれを他者へ共有したかったのか、私はそれも理解することが出来た。


「自分のバンドを組んでライブハウスに出る」


テツオのノートのリストの、最後の項目には確かにそう記されていた。

彼は自らの意思で呼吸をするために、また精神を正気に保つための拠り所としてこの願望のリストを作成したのだ。結果それは叶わなかったが、今私は彼の切実な願いを彼の肉体を介して理解している。彼のその願いも身体を借りた恩に報いる礼儀として叶えてやりたいところだが、残念ながら私にはもう時間があまり残されていない。

精神体である私は、いくら肉体というデバイスを借りていても、あまりに異なる情報環境での活動によって蓄積された精神負荷の影響により、このままではいずれ精神構造に異常をきたし、良くない意味で地球環境に適応した「書き換えられた情報体」となり帰星の能力を失ってしまうからだ。活動限界まで残された猶予は地球の時間であと22時間。それを超える前に私は赤木テツオの肉体から離脱しなければならない。離脱の際、無論赤城テツオの精神はすでに死亡しているため、突然死という形で今度こそ完全に赤城テツオの生命活動は終了する。だが、彼の身体を借りた恩に対する礼儀と、生命体が自己と他者の間に存在する関係性の情報網を、仮想的なエネルギーとして実感する「縁」という概念に乗っとって、テツオの望んだ目的を、わずかに残る私の精神エネルギーでこの星に干渉し、「部分的に」叶えてやることにした。

この星ではライブを行う際にマイクという声量拡張の機械を使用する。この星に現存するマイクという機器、またこれから作成されるマイクという形勢概念すべてに、私はテツオの「声」を少しずつ宿すことにした。これから先この星では、誰かがマイクを通して声を他者に歌い届ける時、ほんの少しだけ歌い手の声と共に、確実にテツオの歌声も一緒に相手の耳に届くのだ。いつかこの星からテツオの存在情報が消えたとしても、音楽が続く限りテツオの声はこの星に響き続けるだろう。そしてその声がいつか、誰かの呼吸を楽にするのだ。

私はそろそろ時間が来てしまった。そろそろ星に帰らねばならない。さらばだテツオよ。ライブハウス、そして地球。この星の感覚と言語表現を借りるならば、短い時間だったが良い経験をさせてもらった。ちなみに私の星の座標は地球の文字と観測記号を借りて表記するとS.H.U.R.E SM-5-8となる。

いつか人類が自らの存在を克服し、私たちの故郷を観測し訪問できることを願っている。

星屑の彼方から来た独りの訪問者が地球を去った後、夜の喧騒は少しずつ解け、やがてひとつひとつの声となって散らばり闇に溶けていった。そして訪れた深い静寂の中、夜空はやはり暗く冷気に満ちていて、今から数時間後に鳴り出す朝の音を、耳を澄ませながら息を殺して待っているようだった。


-完-


_______________________


という感じです。皆さんはどう感じられたでしょうか。

真相は結局わからないままですが、我々もこの先想像力を絶やさず真剣に取り組みますので、とりあえず皆さんとも実感を大事に一緒に楽しんでゆけたらと思います。

とりあえず深呼吸しつつ、新年度も不屈の卑屈をよろしくお願いします!

ではまた!



折笠




メンバー二人による絶妙な雑談PODCAST

「不屈の卑屈のハプニング・カフェ」


毎週金曜更新!!


ご視聴はこちらから↓




不屈の卑屈/差鉄 ミュージック・ビデオ 公開中





不屈の卑屈2nd フルアルバム

「オールライト伝説」


各種配信サービスより好評配信中。





 
 
 

コメント


最新記事

ソーシャルメディア

  • X
  • Facebook
  • Soundcloud
  • Spotify
  • Instagram
bottom of page