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祝!!「差鉄」MV公開!!

どうも!

不屈の卑屈の折笠です。

 

久々のブログ更新です。

 夏も過ぎ、秋に移行しようとしてますが皆様お元気でしょうか?

 不屈の卑屈の初プロショットミュージックビデオが公開されました!!

楽曲は2ndフルアルバム「オールライト伝説」より「差鉄」です。


不屈の卑屈/差鉄MV


皆様もうご覧になられたでしょうか?

是非ご家族の食卓に、交際相手の家族初顔合わせの会食に、仲直りしたての恋人達の晩酌に一緒に観覧するのがピッタシの仕上がりとなっております。

 

前回「オールライト伝説」の楽曲解説をブログで書きましたが、今回MVも制作したので改めて差鉄という楽曲の世界観をここで解説させていただこうかなと!

(あくまで歌詞を書いてる僕の主観であり、絶対的な正解という訳ではないので各々解釈していただければと思います。)

 

この曲のテーマは「他者と自分との間に生まれる軋轢の許容と拒絶」だと思っています。

すれ違い、傷つけ合い、たとえ対岸に手が届けどすぐまた次の思惑に囚われてしまう。

どんなに他者を求め、見つめても自分の心が満たされないのは何故なのか。

 

全くそんなつもりではないのにお互いが解釈を違えた結果不和に陥る状況はよくあることです。

まるでそれは夏の終わりに再開した若い男女のすれ違いにも似ています。

では少し時間を戻し、その実例を見てみましょう。

 

――――――――

 

2008年9月3日、高校2年の夏休みが明け、私はタイチと高校の渡り廊下でひと月ぶりに再会した。

 タイチは高校2年の春のクラス替えで初めて知り合った男子で、最初に彼と話したのは隣の席だった彼に、忘れたCrown English Communication IIを借りたのがきっかけだった。

教科書一式を忘れた私に彼は快くそれを貸してくれた。私は本を開くと同時に四角い紙が床に落ちてしまったことに気づいた。栞かと思い拾い上げると、ヒッと声を上げて手が硬直し、またそれを足元に落としてしまった。

恐る恐る覗き込むと、そこには暗闇の中で赤く充血した目をこちらに向ける断末魔の表情の男性が写っていた。

私は見てはいけないものを見た気がして、急いでそれを拾い裏返して机の上に置いた。

困惑していると、隣でタイチがこちらを無表情で見ていることに気づいた。

「ごめん、これ落としちゃって。」

「ああ、いいよ。これ昨日、中の文を訳したくて適当に挟んどいたんだよね。」

「ああ、そうなんだ。」

「昨日近所のブックオフで見つけたんだよね。この人たち知ってる?」

「いや、知らない。ていうかその、すごいね、これ。」

「うん、モグワイはすごいよ。」


 そのモグワイのCDジャケットがきっかけで、タイチとはよく話すようになった。タイチは音楽好きで、兄の影響で洋楽、邦楽問わず色々なものを聞いているらしい。休み時間によくおすすめのCDを見せてもらったり、海外アーティストの奇行エピソードなどを教えてくれた。

最後に買ったCDが10歳の時に従姉妹に勧められて買ったTommy february6のEVERYDAY AT THE BUS STOPで止まっている私にとっては、彼の音楽の話は理解し難く、笑いどころもほとんどわからなかったが、なんとなく気がつくといつもタイチと話していることが多かった。

 そして今年の夏休み前最後の補講の後、私は高校から歩いて30分かかるジャスコにあるレコード店に向かっていた。補講が始まる少し前に、教室でタイチから勧められたCDを買いに行くためだ。自分でCDを買うなんて何年ぶりだろう。タイチに借りても良かったが、何故か今日は「いいよ。自分で買って聴いてみるから。」と彼に言ってしまったのだ。

それは彼が、「この人達はさあ、僕が1番好きなバンドなんだよ。」と、夏の陽に照らされながらすごく嬉しそうに語る姿が、妙に目に焼き付いたからだった。

 夏が始まったばかりの土手沿いはひどく蒸し暑く、制服は汗で隙間なく体に張り付いていて、もはや本当に着ているのか不安になるくらいだった。

「なんで自分で買うなんて言ったんだろ・・。」私は少し後悔していた。

焼けそうなほど暑い日差しの下で、時折川沿いの涼しい風が吹くたび、何故かタイチの嬉しそうな顔が心に浮かんだ。


 やっとの思いでジャスコについた私は、自販機やフードコートにも目をくれず、レコード店へと入っていった。

暑さでぼやけていた頭が空調でみるみる冴えていく。広い店内を見渡しながら洋楽のコーナーに進むと、大切なことを急に私は思い出した。

「・・・なんて名前のバンドだっけ?」

確かに聞いたのだが、全体像が思い出せない。だが今更タイチにそれを聞くのもなんか間抜けだし、何かに負けた気すらするので自分で思い出したかった。

確か夏に聴くと最高、とか言ってたな。夏っぽいバンドだよね多分。あと確かシ。シから始まる名前だった。てことは洋楽のサ行の棚を見れば良いんだ。

指で棚の上をなぞり、シの札を探す。「シ、シ、えーっと。」

シからス、セあたりに一度通り過ぎ、またシから指で空をなぞる。2回ほどそれを繰り返した。

「あった!これだ!ジャケットもめっちゃ夏っぽいし。バンド名もこの響きだ。」

手に取ったCDには青いプールで泳ぐ女性がゆらめき、飛び込み台からは犬の足がのぞいている。奇しくもそこに書いてあるアルバムタイトルは、今まさに彼女が付けている腕時計と同じ14:59だった。

「これだ!シュガー・レイ!確かにそう言ってた!」

 

そして9/3、夏休み明けの学校は、夏の思い出を語り合う人達や新学期が始まることへの愚痴を言い合う人達で賑わっていた。私はそれを見て少し嬉しくなりながら渡り廊下を歩いた。すると前から半透明のプラスチックのカバンを教科書でパンパンにさせた男が、俯きながら近づいてくるのが見えた。

「あ、おはよ。」

「おはよう。」

タイチが顔を上げて挨拶をした瞬間、プラスチックのカバンのボタンが外れ、中身が床に勢いよく散らばった。私は言葉がうまく出ない程笑いながら、それを拾うのを手伝った。

中身を拾い上げると、3冊教科書を私は彼から預かり、教室までの道を並んで歩いた。

「夏休みはどうだった?」私はタイチの横顔を覗きながら尋ねた。

「ああ、普通かな。兄貴の家族と健康ランドに行ったよ。」

「へえ。なんかいいね。そうゆうの。あ、そうだ。君が夏休み前の補講で教えてくれたバンドのCD、私買ったよ。夏休み中聴いてた。」

「おお!どうだった?」

「なんか、結構聴きやすかった。気持ち良い感じて。」

「なるほど。浮遊感は確かにあるね。」

「なんかジャケも気持ち良さそうだし。夏って感じ。」

「ああ、割と最近のやつだねそれ。確かに解放感あるジャケだよね(笑)ケツ丸出しの(笑)

「ん?なんて?」

「あ、ごめん。」

「ギターもなんか激しい曲と優しいのとあって楽しいし。」

「ああ、ギターね。あのボーカル、ギターをチェロの弓で弾いてるんだよ。」

「マジで?大変そう。でもボーカルがの声かっこいいね。なんか青春!て感じ。ノリノリの。」

「ヨンシーの歌声は神秘的だよね。たまに泣いちゃうことあるよ。」

「君、あれで泣くの?(笑)すごいね。」

「やっぱりポストロックが僕は1番好きだな。彼らはそれに気付かせてくれたんだ。」

「あれは確かに、その、ロックンロールな感じだね。ずっと陽気でね。太陽キラキラしてる感じ。」

「ロックンロールて(笑)初めて生の人間から聞いた。その言葉。あれはそんなんじゃないでしょ。ポストロックだよ。君はマジで言葉知らないね(笑)」

「はあ?なんで?」

「ポストロックっていうジャンルがあるんだよ。音楽好きなら普通は知ってるよ。聴かない人にはみんな一緒なんだろうけど。君にはまだ教えるの早すぎたかもしれない(笑)」

 見たことないほどに口角を上げ、引き笑いしながらそう言ったタイチの顔を見て、私は彼の無邪気な笑顔を思い浮かべながら歩いた夏の道の景色を思い出した。それと同時に、胸の真ん中の骨を思い切り掴まれたような嫌な痛みを感じた。

夏の土手と焼けそうな日差し。張り付いた制服とわずかな風。シからセまでの棚。

嬉しそうに話すタイチの笑顔。

 「ふざけんなよ!お前!何様だよ!」

私の怒鳴り声でタイチがフッといつもの真顔に戻る。

私は抱えた教科書を床に叩きつけ、走っているに等しい速度で教室まで歩いた。

 その日は席替えから始まり、タイチとは席も離れて一言も言葉を交わすことはなかった。

 

タイチが無邪気な子供のように自分の好きな音楽を話す姿を見て、「自分にはこんなに好きな物があるんだ」と人に笑って話せることがすごく羨ましかった。私にはそこまで人に自信を持って話せる「好きな物」が無いから。

彼の話してくれる音楽の内容は、正直どれもそこまで興味は無かったけど、私はそれに触れることで、タイチに少しでも近づきたかったのだ。だけどあの渡り廊下で、彼は私に好きなものを共有したかったのでは無いと気づいた。彼は、自分の知識と経験の豊かさを、何も知らない私に教えて優越感に浸りたいだけだったのだ。私はそれがとても悲しくて、どうしても彼を許すことが出来なかった。

結局その日からタイチとはそのまま卒業まで話すことはなかった。

 

 あの出来事から5回ほど夏を過ごし、私は色々あって音楽雑誌のJ-POP部門の編集部で働いている。

昨日、洋楽部にいる同期とたまたま話していて、私があの夏に買ったアルバムのアーティストはシュガー・レイと言うアメリカの超陽キャのミクスチャーサーフロックのバンドで、タイチが私に勧めてきたのは、アイスランドの荘厳でアーティスティックなポストロックバンド、シガー・ロスだったということを知った。

季節はまた気がつくと夏になっていて、ライターとの打ち合わせ終えた私はファミレスから会社への帰路を、日差しに焼かれながら汗だくで歩いていた。

ふと腕時計を見ると、針は14:59を確かに指していた。

 

-完-

 

 はい。如何でしたでしょうか。

これがまさに「差鉄」です。

これはあくまで一例ですが、生きてるとこういうすれ違い、ありますよね。

でも仕方ありません。我々は互いに歩み寄ることができても、本当の意味で自己以上に他者に触れることは出来ないのですから。もどかしい限りですが、自分がそれを望むならいつか相手に手が届くことを信じて、距離を探り合いながら共に生きるしかないようです。

そんなイメージを我々の楽曲「差鉄」には込めました。皆様には是非MVを沢山ご視聴頂き、我々と共に季節を乗り越えて頂けたら嬉しいです。

 

そして、来月より不屈の卑屈の新コンテンツ、

PODCAST

「不屈の卑屈のハプニング・カフェ」が配信開始です!!

主にメンバー二人がほぼ内容を決めず、ゆるいトピックについて快活に会話する内容です。

たまにゲストをお呼びしたりもしようかなと!

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第一回は10月3日(金)より配信サービスにて公開予定です!

お楽しみに!

 

不屈の卑屈 折笠





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シュガー・レイ/14:59


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シガー・ロス/残響



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モグワイ/カム・オン・ダイ・ヤング



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Tommy february6/ EVERYDAY AT THE BUS STOP







 
 
 

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